彼らの練習場は自分が所属するサンジョゼECは名門サントスFCから選手権前の練習試合の要請を受けて試合を行った。
サントスはサンパウロ州の海沿いにある町で魚が多く獲れ都市部に比べると更に明るく好き勝手でめちゃくちゃな人が沢山いそうな感じで活気のある町だ。
チームとしてのサントスは王様ペレ、ホビーニョ(レアルマドリー)ジエゴ(ブレーメン)など数多くのクラッキ(熟練されたスター)が在籍してきたチームで現在、監督はルッシェンブルゴ、日系選手としてホドリゴ・タバタ、ゼ・ホベルト(ブラジル代表)クレーベルサンターナと戦力はトップクラスでブラジル全土のジョガドール(選手)がサントス、サンパウロ、コリンチャンス、パルメイラスと契約できることを夢見て日々闘っている。
彼らの練習場は芝生のグランドが縦に3面あり、端に室内プール、選手寮、食堂、教会、フィジカルトレーニング専用の砂浜など、選手は不自由なくFutebolに集中環境が整っていた。
試合は45分×2で一本目はお互い先発メンバーで1週間後に開幕する選手権に向けての調整試合という位置づけだった。自分の予想では圧倒的にボールを支配されるかなと思っていたけれど、五分五分だった。
プルーノ(サンジョゼの10番)は普通に目立っていた。コーナーからのこぼれ球押し込み1対0でリードし前半を終え自分は後半25分過ぎぐらいからプレーできた。後半に1点入れられ試合は1対1で引き分けで終了した。
前日から監督のトニーニョモウラ(元湘南ベルマーレ監督)ドウグラスコーチに「お前はよく選手と喧嘩するけれど、それがサントスの選手に対してどうでるか?」「ピポッカ(相手に対してびびるようなニュアンス)するか楽しみだ」と言われ、ただでさえプレッシャーがあったのに更にかけてこられたなと思っていたけれど結局自分がしなくてはならないのは相手を抜くこと、身体全体をぶち当てること、攻撃的なプレーをすることでそれを達成するためには一切を捨て集中し必死になることが大切で、それを自分で確認してから試合に入った。相手を抜くチャンスは無かったけれどぶち当ててボールを獲ることはできたので目標を立ててそのためには必要なのかを考え、それを実際の行動で示すことが出来たので次に繋がる大きな経験となった。
サントスの選手は結果の通りコンディションが出来上がっていなかったと思うが、ゼ・ホベルトは別格であった。派手なプレーは一切無かったが、身体の身のこなし囲まれた時の落ち着き方、ドミーナする方向、パススピードは派手だった。何であんなに激しい中盤でプレーしていて、身体のバランスが崩れないのか不思議でしょうがなかった。でも月に2000万円も貰っている選手の割にはこんなものか?とも思った。
自分のお手本となる選手ホドリゴ・タバタは二年前の全国選手権での活躍が認められサントスに移籍した選手で身長は170cmぐらいだが、動き回り、浮き球のスルーパスがとても巧い。引き気味のアタッカンチ(FW)なので前線に飛び出したり、ポストとなったり忙しく動いていた。
いつも見せるバスの正確さに今回は欠けていたがパスを出して直ぐに動く彼のプレースタイル、そして自分が手本にしている一番の理由である精神的な強さ、必死さ、ガムシャラさは見ることができた。
サンジョゼの選手がGKにバックパスを出した際、彼は必死に追いかけカヒ―ニョ(スライディング)
をGKに向けてぶちまかしていた。寸前のところでGKにクリアーされたが、サントスというブラジルで絶大な人気を誇るチームの10番が二部に上がったばかりのチームに対してそれをしたことに自分はプロとは何かを改めて考えさせられた。
サントスともなれば、ひっきりなしに代理人が選手を連れてきて裏金を使いその選手で試合に出そうとする。そういったFutebolの表に出ない部分と闘っている選手の姿はまさにあれだと思う。
彼のサントスでの行動は去年から見てきたし、実際代理人が連れてきたチリ人の選手に10番を奪われ途中出場がずっと続いた時期があったが、出れば結果を残していたし、競争に勝ち抜き今またレギュラーとして試合に出ている。そんな選手達を目の前で見て、対戦できたことに自分は大きなものに感じるし、情報を欲しがっている人達に伝えたい。試合の後、前から疑問に思っていたサントスとサンジョゼの選手は何が違うのか?をトニーニョをはじめとする数人の選手に聞いてみた。彼らは一様につまり
Futebolに集中できる環境があるかないかの差だと答えた。
これまでにも沢山の選手に質問してきたけれど皆一緒の答えだった。技術の違いが真っ先に挙がると思っていたら不思議と彼らにはそういった考えはなく、あれだけの環境を与えられれば何の遜色もなくプレーできると思っている。彼らは誰一人としてあの選手に自分は劣っているということを考えないし、そもそも他人と自分を比較しない。この考え方は自分には無かったしブランドに弱い日本人にはできない考え方だと思った。しかし、この考え方が試合で命取りになる。
試合後、食堂で食事をし、その豪華さに驚いた後、寮を案内して貰った。そうしている時にルッシェンブルゴ監督が前を通り過ぎ自分の部屋に消えていった。ずばりプロフェショナリズモとは何かを聞きたかったので跡をつけたけれど、管理人に阻止されてとても残念だったが、大きな経験ができたので良しとした。
最後に良いスパイクを買うことが困難なブラジルでは環境を与えてくれれば俺も出来ると皆思うかもしれないけれど自分の眼にはサントスとサンジョゼの選手の違いは「お前には負けない」といった気持ちの違いではないかなと映った。
サントスの練習場は名前がある。その名も「Rei PELE(王様ペレ)」だった。
2007年03月16日
この記事へのコメント
コメントを書く